GREAR・PASSION

大地を駆ける、野生の魂
アニマルマスター達磨です、パカラナはカピバラの親戚!


今日はなんだか昔語りでもしようと思う
物心ついた時から傍にいた女性がいた
その子は俺より一才年下でクリクリした目の可愛らしい女の子だった
もっともまだ幼稚園にも入っていなかった俺にとってはただの遊び相手、悪くしたら叩いたら泣く玩具程度にしか感じていなかった
それでも彼女は俺の後ろを付いて来てくれた
幼稚園、小学校と進学し中学年になる頃には鬱陶しいだけの存在でしかなかった
だが、姉妹のいなかった彼女はいつまでも俺を遊び相手にしていた
高学年になるとだんだんと彼女も俺から離れて行った
俺はその事を厄介払いが出来たと嬉しく思いつつもなんだか寂しく感じていた
いや、そのときはその空虚な感情を理解することが出来なかった
初めて彼女を異性として意識したのは中学校に入ってからだった
だんだんと膨らんでくる胸、漂って来る甘い香り
こみ上げて来る情熱を抑えるために俺は自慰を繰り返すしかなかった
自分の感情を誤魔化して彼女との緩やかな時間は流れて行った
その時間に急激な変化が起きたのは俺が大学受験に失敗した19才の時だった
彼女は突然高熱を出し意識を失った
担ぎ込まれた病院で知らされた病の名はリンパ性白血病だった
両親と血液の型が合う可能性は10%、兄弟ならば50%、まったくの他人ならば数万分の1
勿論、家族全員で血液検査を受けた
しかし、型が適合した者は誰もいなかった
50%の可能性で適合するはずの俺でさえも駄目であった
俺は絶望に打ちひしがれた
でかい口叩きながら、周りを見下しながら、妹一人すら助けられないのか
型が適合するドナーを待ちながら妹は確実に衰弱していった
放射線による科学治療で髪の毛は抜け落ち体重も減っていった
予備校に通っていた俺は毎日帰りに病院に寄っていた
ある日、父も母もおらず、妹と俺だけになった
妹は、きっともう助からないだろう、最後くらいは好きな人に抱かれて死にたいと言った
俺は、困惑して、泣いた
泣くしかなかった
こんなにも妹は俺を愛してくれていたのだ
妹は俺の頭をなでてくれた
点滴の針で緑色に変色した腕を手の平で隠しながら俺をなでてくれた
死の淵にあっても人を思いやる心を失わない
なんて気丈で、なんて優しくて、なんて残酷なんだ
どうして神様はこんないい子を殺してしまうんだ
もう、気持ちを、抑えることは、出来なかった
俺は、妹を、抱いて、抱いた
妹はおそろしいほどに軽くなっていた
妹が死んだのは大学の合格発表前だった
妹が死んだ事で家族はバラバラになってしまった
俺は妹の思い出が残る家で暮らすことが出来なかった
最後まで俺の独り暮らしに反対したのが母だった
妹が死んで、もう4年
俺はあの家に帰る
バラバラになった家族が住まうあの家に